土
こっつん、こっつん、 打たれる土は、 よい畑になって、 よい麦生むよ。 朝から晩まで、 踏まれる土は、 よい道になって、 車をとおすよ。 打たれぬ土は 踏まれぬ土は、 要らない土か。 いえいえ、それは、 名のない草の お宿をするよ。
さよなら
降りる子は海に、 乗る子は山に。 船はさんばしに、 さんばしは船に。 鐘の音は瞳に、 けむりは町に。 町は昼間に 夕日は空に。 わたしもしましょ、 さよならしましょ。
不思議
私は不思議でたまらない、 黒い雲からふる雨が 銀にひかっていることが。 私は不思議でたまらない、 青い桑の葉食べている、 蚕が白くなることが。 私は不思議でたまらない、 だれもいじらぬ夕顔が ひとりでぱらりと開くのが。 私は不思議でたまらない、 誰にきいても笑ってて、...
みえない星
空のおくには何がある。 空のおくには星がある。 星のおくには何がある。 星のおくにも星がある。 眼に見えない星がある。 みえない星はなんの星。 お供の多い王様の、 ひとりの好きなたましいと みんなに見られた踊り子の、 かくれていたたましいと。
積もった雪
上の雪 さむかろうな。 つめたい月がさしていて。 下の雪 重かろうな。 何百人ものせていて。 中の雪 さみしかろうな 空も地面もみえないで。
さびしいとき
わたしがさびしいときに、 よその人は知らないの。 私がさびしいときに、 お友だちは笑うの。 私がさびしいときに お母さんはやさしいの。 私がさびしいときに、 仏さまはさびしいの。
木
お花が散って 実が熟れて、 その実が落ちて 葉が落ちて それから芽が出て 花が咲く。 そうして何べん まわったら、 この木は御用がすむかしら。
明るい方へ
明るい方へ 明るい方へ。 一つの葉でも 陽の洩るとこへ。 藪かげの草は。 明るい方へ 明るい方へ。 翅は焦げようと 灯のあるとこへ。 夜飛ぶ虫は。 明るい方へ 明るい方へ。 一分もひろく 日の射すとこへ。 都会に住む子等は。
繭とお墓
蚕(かいこ)は繭(まゆ)に はいります、 きゅうくつそうな あの繭に。 けれど、蚕は うれしかろ、 蝶々になって 飛べるのよ。 人はお墓へ はいります、 暗いさみしい あのお墓へ。 そして、いい子は 翅(はね)が生え、 天使になって 飛べるのよ。 とべ
日の光
おてんとさまのお使いが、 そろって空をたちました。 みちで出逢ったみなみ風、 なにしにゆくの、とききました。 ひとりのお使いいいました、 「ひかりの粉を地に撒くの、 みんながお仕事できるよう。」 ひとりはほんとに嬉しそう、 「私はお花を咲かせるの、...